「映画をみる」というフレーズを使う際、「観る」と「見る」のどっちを使おうか迷いますよね。
結論から言うと、どちらを使っても正しいです。
ここでは、映画鑑賞における「観る」と「見る」の意味の違いと使い分けをカンタンに解説しますので、意味をチェックしてみて気になる方は使い分けをおすすめします。
さらにSNS上ではどちらが使われているのか、英語やフランス語での表記はどうなっているのか、映画鑑賞の効果などについてもまとめました。
目次
映画を「観る」と「見る」意味の違いをカンタン解説
映画の「観る」と「見る」は声に出すと同じですが、LINEのメッセージやSNSの投稿、メールといった文章にするときにどちらにするか迷いがちです。
意味としては次のような違いがあります。
- 「観る」…物事を意識して見る状態、小学4年生で習う常用外漢字
- 「見る」…自然と目に入っている状態、小学1年生で習う常用漢字
辞書で確認したところ、国語辞典では「みる」の項目のなかに「観る」と「見る」と「診る」が入っているため、広義の意味では近い単語です。
正確な違いは類語辞典や漢字辞典に記載がありました。
一例としてgoo辞書では「観る」と「見る」の意味や使い方について、次のように表記しています。
まずは「観る」の「観」です。
意味
①みる。くわしくみる。ながめる。「観客」「観測」「参観」>>引用元:goo辞書 漢字辞典「「観」の意味」
次に「見る」の「見」です。
意味
①みる。目でみる。みえる。「見聞」「外見」 ②みるところ。物のみかた。考え。立場。「見解」「見当」 ③まみえる。人に会う。「見参」「会見」 ④あらわれる。あらわす。「露見」「発見」 ⑤る。らる。…される。受け身の助字。>>引用元:goo辞書 漢字辞典「「見」の意味」
しっかり注視する、じっくり見るといった意識的に見るというニュアンスが「観る」であり、形や色や動きなどを意識、無意識を問わず視界におさめるニュアンスが「見る」ですね。
映画を「観る」と「見る」はどっちが正しい?使い分け方法を紹介
映画鑑賞のときに使うときは「観る」と「見る」はどっちが正しいのでしょうか。
結論からいきますと「映画を観る」も「映画を見る」も正しいです。
映画はじっくり観るものでもありますが、目が自然と捉えるものでもあるためです。
どのように使い分けるのかの目安もお伝えします。
迷ったときの「みる」の使い分け方
映画を「観る」か「見る」で迷った場合、常用漢字である「見る」を使いましょう。
新聞や通信、放送業界の用語表現のルールをまとめた『記者ハンドブック』の「みる」の項目にも「映画・テレビを見る」と明記されています。
その他の「見る」の一般用語、使い方はこちらです。
みる=(観る、看る、視る)→見る〔一般用語〕
足元を見る、憂き目を見る、映画・テレビを見る、大目に見る、景気の動向を見る、隙を見る、調子を見る、疲れが見える、手相を見る、被災現場を見る、人を見る目がある、日の目を見る、見え見え、見るからに、見る見る(うちに)、面倒を見る、様子を見る>>一般社団法人共同通信社編(2023年)『記者ハンドブック 第14 版 新聞用字用語集』株式会社共同通信社 424pより引用
映画館での鑑賞は「観る」がおすすめ
”映画館”で映画をみるときは「観る」をおすすめします。
映画館での映画鑑賞は特別な体験です。
大画面と迫力の音響は、映画の世界に深く没入させ、視覚的および聴覚的な感動を引き出すことは珍しくありません。
そのため映画館での映画鑑賞は意識して見ることと同意義、特別な映画であればなおさら「映画を観る」が合っていると言えるでしょう。
家庭での映画や動画視聴は「見る」がおすすめ
”家庭”や”移動中”での気軽な映画や動画視聴は「見る」をおすすめします。
自宅での視聴体験は映画館での鑑賞とは異なる魅力があります。
前のめりで食い入るように視聴するスタイルというよりは、リラックスした状態で視聴したり、ながら見することが多いはず。
そういった自宅での映画や動画の流し見、ながら見などは「映画を見る」と言えます。
映画とテレビ番組の視聴の「みる」の違い
映画とテレビ番組の視聴体験には大きな違いがあります。
映画は通常、長い時間をかけて一つの物語を深く掘り下げ、鑑賞している人に感情移入や思考を促しますが、テレビ番組はより短い時間で多様な内容を提供する日常的な娯楽としての側面が強いです。
そのため映画鑑賞はしばしば「観る」と表現され、テレビ視聴は「見る」と表現されることが多い傾向にあります。
ただ気軽に映画を見るときもあるし、逆にテレビ番組を真剣に観るときもあるはず。
そういったシチュエーション、気分などでも「観る」と「見る」を使い分けしても差し支えないでしょう。
映画を「観る」と「見る」どっちを使っているか知恵袋やSNSを調査
「映画をみる」で迷ったときは「見る」を使うことをおすすめしましたが、一般的には「観る」と「見る」のどっちが使われているのでしょうか。
Yahoo!知恵袋では「観る」が多い
Yahoo!知恵袋でも「映画を「観る」と「見る」とではどちらが正しいのか?」という質問が複数件確認できました。
みなさん同じように迷っているようですね。
ベストアンサーに選ばれている回答も、
- 一般的には「見る」を使うべき
- 意味合いとしては「観る」が合っている
といったように、両方を支持する声が存在していました。
そこで「参考になる」ボタンの数を数えたところ、2024年現在、少しだけ「観る」の方が多かったです。
>>引用元:Yahoo!知恵袋
X(旧Twitter)では「見る」が多い
X(旧Twitter)の投稿を過去30日間ほど調べてみたところ、「映画を見る」は6,829件、「映画を観る」は6,334件とも少しだけ「見る」が多かったです。
>>Yahoo!リアルタイム検索より2024年1月現時点のデータ画像引用、赤枠は追記
このように、Yahoo!知恵袋では「観る」、Xでは「見る」と答えが逆でしたが、差がついたといってもほぼ僅差。
「観る」と「見る」、どちらも同じくらいよく使われていると分かりました。
映画を「観る」と「見る」の英語表記
「みる」という単語の理解を深めることで、使い分け時の選択も簡単になります。
ここでは英語をはじめとした海外の「みる」の認識を見ていきましょう。
英語にも「Look」「Watch」「See」といった具合に、複数種類あります。
「映画をみる」場合はどの単語になるのでしょうか。
英語の「みる」表記|Look・Watch・Seeの違い
【見る】Look / Watch / See の違い pic.twitter.com/x065zgq70P
— こあたん🇦🇺こあらの学校 (@KoalaEnglish180) August 2, 2020
まず英単語の「みる」の意味をカンタンに解説します。
単語 | 意味 |
Look | 動かないものを意識して見る、能動的 |
Watch | 動くものを意識して見る、能動的 |
See | 意識せずとも目に入っている、受動的 |
この意味からいくと、映画をみるは「Watch」が正しいように思えます。
しかし、映画は映画館で座っていると自然と目に飛び込んでくるもののため「see a movie」です。
一方テレビで映画をみる場合、テレビは意識的に画面をみているというニュアンスのため「watch a movie on TV」となります。
フランス語や中国語での映画を「みる」表記
その他の言語の「映画をみる」を紹介します。
- フランス語…「aller voir un film」、または「aller regarder un film」
- 中国語…「看电影」
- ドイツ語…「einen Film schauen」
フランス語にも「観る」と「見る」のようなニュアンスがあり、中国語の映画をみるの漢字は「看」でした。
「みる」は汎用性が高い単語なので、意味が複数ある言語は多いようです。
映画を観る効果と影響
映画を「みる」の漢字について、迷いや論争が起こるのは、映画鑑賞がもたらす効果が大きいからだと考えられます。
映画の中で学んだことや感じたことが、人生や考え方に大きく影響することはしばしば起こりうることです。
科学的にも、映画にはさまざまな良い効果が期待され、研究が盛んにおこなわれています。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの科学者たちのレポートによると、映画鑑賞はジムでの軽い有酸素運動と同じくらい健康に良い可能性があることを発見したとあります。
scientists at University College London have discovered that a cinema visit could be as good for your health as some light cardio at the gym.
>>引用元:デイリー・エクスプレスのオンライン版
今はVODやスマホ、タブレット、倍速視聴などの普及によって以前よりも手軽に、たくさんの映画を「見」られるようになりました。
しかし素晴らしい映画や動画が作られ、心を動かす人がいる限りは「観」るという概念はなくならないのではないでしょうか。